インドを象徴する大河「ガンジス川」。聖なる川として数千年の信仰を集める一方で、ガンジス川 汚いと言われることもあります。この一見矛盾する評価は、ガンジス川の複雑さを象徴しています。本ガイドでは、なぜガンジス川 汚いと言われるのか、それでもなぜ沐浴(もくよく)をするのか、そしてバラナシ観光でどのように安全に楽しむのかを、科学的・文化的な両面から詳しく解説します。先入観を超えた、ガンジス川の真実が見えてくるはずです。
ガンジス川が「汚い」と言われるのは本当か
「世界一汚い川」と呼ばれる背景
ガンジス川が「汚い」と呼ばれるようになったのは、近年の経済成長と都市化に伴う環境汚染がきっかけです。20世紀の後半から、インドの工業化に伴い、未処理の下水や工業廃水がガンジス川に流れ込むようになりました。
国際的な環境調査機関による水質測定では、ガンジス川の特定地点における大腸菌数が、世界の一般的な川の基準値をはるかに超えていることが報告されています。このデータが「世界一汚い川」という評価につながったのです。
水質データや浄化策の全体像をもう少し深掘りしたい場合は、ガンジス川の水質汚染の現状と改善への取り組みの整理もあわせて読むと、数値と施策の関係が掴みやすくなります。
ただし、注意すべき点は、「ガンジス川全体が等しく汚い」わけではないということです。流域によって、時間帯によって、季節によって、水質は大きく異なります。
実際に見える汚れ(泡・ごみ・臭い)の正体
ガンジス川を訪れた人が最初に驚くのが、川の表面に浮かぶ白い泡と、水面に散らばるごみです。これらの正体を知ることで、川への見方が変わります。
- 白い泡:洗剤などの界面活性剤が川に流れ込み、水が泡立つ現象。これ自体は特に危険ではありませんが、水の汚染を視覚的に示す指標になります
- ごみ(花・布・プラスチック):沐浴者が供える花、火葬後に遺灰を流すための布、そして近代的な使い捨てプラスチック。その由来は様々ですが、川の「汚れ」として目に映ります
- 臭い:生活排水、未処理の下水、そして夏場の低水時に有機物が腐敗するときに発生する臭い。これは実際の汚染の指標となります
これらを「汚い」と判断することは不可能ではありませんが、その背景にある複雑な事情を知ることが、ガンジス川 汚いという評判を理解する第一歩です。
「汚い=危険」と言い切れない理由(場所・季節・時間帯で差が出る)
重要な指摘として、「ガンジス川の水質が均一ではない」ということが挙げられます。同じガンジス川でも、場所によって、時間帯によって、季節によって、水の状態は大きく異なるのです。
- 上流 vs 下流:ヒマラヤ山脈から発源する上流域(ウッタルカシ、リシケシ周辺)は、未処理汚水の流入が少ないため、比較的水が清澄です。一方、デリーやバラナシなどの大都市を通過する下流は、汚染が深刻化
- 雨季 vs 乾季:雨季(6月~9月)は、増水した川が汚物を下流に流すため、一時的には濃度が薄まります。乾季(11月~4月)は、水量が減り、汚染物質の濃度が高くなりがちです
- 早朝 vs 日中 vs 夜間:早朝は降水による自浄作用で水が比較的きれいですが、日中から夜間に向けて、生活排水の流入により汚れが進みます
つまり、「ガンジス川 汚いという単純な判断より、「どこの、どの季節の、どの時間帯のガンジス川か」を知ることが重要なのです。
ガンジス川の基本情報と、インドでの重要性
ガンジス川の概要(流域・人々の暮らしとの関係)
ガンジス川は、インドの北部を流れる全長約2510kmの大河で、アジア有数の大河の一つです。ヒマラヤ山脈の聖地ゴムクで発源し、東に流れてインド東部のベンガル湾に注ぎ込みます。
流域の人口は約4億人以上—実に世界の人口の約5%がガンジス川流域に住んでいるのです。農業用水の供給、飲料水、電力生成、そして文化的・宗教的な中心—ガンジス川はインド文明を支える多面的な役割を果たしているのです。
時間帯ごとの様子(早朝/日中/夜)
バラナシを例に、時間帯ごとのガンジス川の様子を描写します。
- 早朝(4時~7時):沐浴者たちが次々と川に降りてくる神聖な時間。川面は静寂に包まれ、朝日が水面に反射する。この時間帯の水は、夜間の汚水流入が少ないため、比較的清澄です
- 日中(8時~16時):観光ボートが往来し、各ガート(階段)には多くの人が集まります。生活排水の流入が増え、川の「汚さ」が最も目立つ時間帯です
- 夜間(18時~22時):夜のガンガー・アールティ(火の儀式)が行われ、川は精神的・文化的なクライマックスを迎えます
夜のガンガー・アールティが持つ意味と雰囲気
ガンジス川で最も有名な儀式が「ガンガー・アールティ」です。バラナシのダシャーシュメドガート(Dashaswamedh Ghat)で、毎晩行われるこの儀式は、神聖なガンジス川に感謝と祈りを捧げるセレモニーです。
数十人の僧侶が、大きなブラスの火皿(アールティ)を回転させながら、讃歌を唱えます。火が揺らめくごとに、観客たちの心が揺さぶられ、「汚い川」という認識が、一時的に「聖なる川」という認識へと転換するのです。
季節で変わる水量と景観(増水・霧など)
ガンジス川の季節変化は極めて劇的です。
- 雨季(6月~9月):ヒマラヤからの融雪と雨により、川の水量が3倍~5倍に増加。水の流れが速く、ガート(階段)の多くが水没します
- 乾季(10月~5月):水量が減り、砂浜が現れます。特に12月~2月は、朝霧が立ち込め、神秘的な景観が広がります。この時期が、観光に最も適しているとされます
水質汚染の主な原因をわかりやすく整理する
生活排水・下水処理の課題
ガンジス川の水質汚染の最大の原因は、未処理の生活排水です。流域の都市部に、十分な下水処理施設が整備されていないため、家庭排水がそのまま川に流れ込みます。
バラナシの人口は約100万人。毎日、数百トンの生活排水が、処理されないまま川に流れ込むのです。これが、大腸菌を含む病原性微生物が川に繁殖する主要な原因となっています。
工業排水・化学物質の影響
インドの工業化に伴い、ガンジス川に流れ込む化学物質が増加しています。
- 革なめし工場:バラナシ周辺には大量の革工場があり、クロム、アルミニウムなどの化学物質が排出される
- テキスタイル工場:染料や漂白剤などが川に流入
- 農業排水:肥料由来の過剰な窒素・リン(富栄養化)により、アオコの増殖が促進される
これらの化学物質は、長期的な健康被害(発がん性物質の蓄積など)の原因となる可能性があります。
宗教行為や観光による負荷(花・供物・ごみ)
「誰が悪い」ではなく構造で理解する視点
ガンジス川 汚いと言う状況を、「信仰心の厚いインド人が悪い」と短絡するのは、完全な誤解です。むしろ、問題は「インドの急速な経済成長に、環境整備が追いついていない」という構造的な問題なのです。
沐浴者が捧げる花や供物、火葬後の遺灰は、確かに川の汚れの一因になります。しかし、これらは何千年も前から行われてきた伝統的な行為で、本来は環境に大きな負荷をかけるものではありませんでした。問題は、これらの伝統的な行為に、近代的なプラスチックごみ、未処理の工業排水、家庭排水が加わったことで、川の自浄能力を超えてしまったことなのです。
ガンジス川が聖なる川とされる理由
女神ガンガーの神話と信仰
ガンジス川が聖なる川とされる理由は、ヒンドゥー教の神話に遡ります。ガンジス川は、女神ガンガーの化身だと信じられています。
神話によれば、かつて王サガラの60,000人の息子たちが、呪いにより灰になってしまいました。その灰をガンジス川の水に流すことで、彼らの魂が救済されたとされています。つまり、ガンジス川に触れること、その水を浴びることは、罪や穢れを洗い流し、魂を浄化する行為だと信じられているのです。
罪や穢れを清めるという考え方
ヒンドゥー教の信仰体系では、人間は「罪や穢れ(アパヴィトラ)」を持って生まれます。この罪や穢れは、行為によって生じたり、前世の行為(カルマ)から引き継がれたりするものです。
ガンジス川の水に触れることで、これらの罪や穢れが洗い流されると信じられています。だからこそ、貧しい人も、富める人も、病気の人も、健康な人も、みんなガンジス川に沐浴するのです。
インドの死生観と「解脱(モクシャ)」
火葬と遺灰を流す慣習が生まれた背景
ガンジス川でよく目にするのが、火葬場です。バラナシのマニカルニカ・ガートやダシャーシュメドガートでは、毎日多くの人の遺体が火葬されています。
ヒンドゥー教では、死後、遺灰をガンジス川に流すことで、故人の魂が「モクシャ(解脱)」に到達すると信じられています。つまり、ガンジス川での火葬は、故人を「来世の輪廻から解放する」という、最高の敬意を払う行為なのです。
バラナシに来た高齢者が、生涯を閉じるためにバラナシで死を待つという習慣があるのは、このガンジス川への深い信仰によるものなのです。
なぜ「汚いのに沐浴する」のか
沐浴(スナン)とは何か
沐浴(スナン)は、単なる「入浴」ではなく、宗教的な浄化儀式です。朝日とともに、沐浴者たちがガンジス川に降りてきて、一連の祈りと身体の洗浄を行います。
沐浴の流れは、一般的に以下の通りです。
- 川の端で立ち、川に向かって祈る(ナマスカール)
- 川の中に入り、上流に向かって3回身体を浸す
- 口に川の水を含み、吐き出す(内部浄化)
- 川から上がり、祈りを続ける
この一連の行為が、物質的な汚れを落とすだけでなく、精神的・魂的な浄化だと信じられているのです。
沐浴で得られると信じられている効果(浄化・祈り)
沐浴者たちが沐浴に期待する効果は、以下の通りです。
- 罪の浄化:現世での悪行や、前世からのカルマを洗い流す
- 病気治癒:特に皮膚病や身体の不調を治す
- 願い成就:結婚、子宝、商売繁盛などの願いを叶える
- 精神的な安定:心の穢れを落とし、内なる平和を得る
- 死後の救済:高齢者や病気の人が、来世での良い転生を願う
沐浴の時期・祭典(クンブメーラ等)
沐浴は通年で行われていますが、特に重要な時期があります。
- クンブメーラ(壺祭):12年に1度、特定の時期にインドの4つの聖地(アラハバード、ハリドワール、ウジャイン、ナシク)で開催される。バラナシのアラハバード(プラヤーグ)では、数百万人が沐浴に訪れます
- マカル・サンクランティ(1月中旬):冬至の時期。太陽が新しい黄道帯に入る日で、この日の沐浴は特に効力が強いと信じられている
- ナバラトリ(9月~10月):女神ドゥルガーを祭る9日間の祭り
価値観の違い(清潔観と聖性の共存)
旅行者が誤解しやすいポイント(「汚い=不敬」ではない)
西洋的な衛生観念を持つ旅行者は、「汚い水に浸かることは、不健康だし、不敬だ」と考えるかもしれません。しかし、これはインドの文化的価値観を完全に誤解しています。
ガンジス川への沐浴は、「水の衛生性」ではなく、「水の聖性」を信仰する行為なのです。つまり、ガンジス川の水が物質的にどれだけ汚染されていようが、その聖性に変わりはないと考えられているのです。
この価値観の違いを理解することが、ガンジス川を正当に理解する第一歩なのです。
浄化は進んでいる?政府・地域の取り組み
ナマミ・ガンゲ計画の概要(何をしているか)
2014年、インド政府はガンジス川の浄化を目標とする「ナマミ・ガンゲ計画」を立ち上げました。この計画は、単なる川の浄化ではなく、流域全体の環境改善を目指すプロジェクトです。
主な事業内容は以下の通りです。
- 下水処理施設の建設:バラナシを含む流域の主要都市に、近代的な下水処理施設を建設
- 河川浄化プロジェクト:既に流入した汚染物質の除去。特に有機物の分解とバクテリア処理に注力
- 産業排水規制:革工場などの污染産業に対し、環境基準の遵守を義務付け
- 廃棄物管理:ガート周辺のごみ収集・処理システムの整備
- 河畔緑化:川沿いの樹林帯の復活により、自然浄化能力を向上
「水を汚さず、水をキレイにする」という啓発や学習の観点では、インドの水事情とガンジス川の背景を学べる資料も参考になります。
下水処理・ごみ回収・規制の方向性
ナマミ・ガンゲ計画の実施により、いくつかの改善が見られています。
- 下水処理:バラナシに新しい下水処理施設が建設され、現在では1日あたり約80トンの下水が処理されるようになりました
- ごみ回収:ガート周辺で定期的なごみ回収が行われ、プラスチックなどの廃棄物が減少
- 産業規制:革工場などに対し、環境基準に適合した排水管理が指導されている
しかし、課題も残っています。下水処理施設の処理能力は、まだ流入する汚水量に追いついていません。
改善の兆しと、残る課題
観光客ができる小さな協力(ごみ・マナー)
ナマミ・ガンゲ計画の進展は、政府の努力だけでなく、観光客や地元住民の協力にかかっています。訪問者ができることは以下の通りです。
- ごみを持ち帰る:川にごみを落とさない。特にプラスチック、使い捨て製品
- 沐浴エリアの尊重:火葬場や宗教儀式の場所では、撮影や立ち入りをしない。これは川の保全だけでなく、宗教的尊重でもあります
- 現地のルール遵守:ガイドの指示に従い、禁止区域には入らない
- 施設利用:有料のボート乗車料などは、川の管理費に充てられることが多い。正規のサービスを利用することで、間接的に浄化を支援できます
ガンジス川の生き物と環境への影響
代表的な生物(ガンジスカワイルカ等)
ガンジス川は、独特の生態系を持つ河川です。最も有名なのが、ガンジスカワイルカ(スススク)です。
このイルカは、ガンジス川にのみ生息する淡水イルカで、インドにおいて聖なる動物とされています。しかし、汚染と過剰な漁業により、個体数は劇的に減少しており、現在は絶滅危惧種に指定されています。
その他の生物としては、ナマズ、コイなどの淡水魚、そしてカワウの種族が挙げられます。
汚染が生態系に与えるリスク
ガンジス川の水質汚染は、生態系に深刻な影響を与えています。
- 酸素不足:有機物が分解されるときに多くの酸素が消費され、川全体が「酸素欠乏状態」になる。これにより、多くの魚が生きられない環境になる
- 有害物質の蓄積:化学物質(特にクロムなどの重金属)が、魚や水草に蓄積。食物連鎖を通じて、人間にも被害が及ぶ可能性がある
- アオコの増殖:富栄養化により、有毒なアオコが増殖し、さらに環境を悪化させるという悪循環
保護活動や現地での啓発の動き
ガンジス川の生態系を守るための取り組みが、徐々に広がっています。
- ガンジスカワイルカ保護計画:特定の区間を保護区として指定し、イルカの個体数回復を目指す
- 地元コミュニティの啓発:川の汚染がもたらす健康被害を説明し、住民の環境意識を高める活動
- NGOの活動:国際的な環境NGOが、ガンジス川の浄化プロジェクトに参画
バラナシ観光でガンジス川を安全に楽しむコツ
見どころ(ガート巡り・早朝ボート・アールティ)
バラナシはガンジス川と一体になった町です。観光の中心は、川沿いのガート(石造りの階段状接岸施設)巡りです。
- ダシャーシュメドガート:最も大きく、最も有名なガート。毎晩のガンガー・アールティが行われる
- マニカルニカ・ガート:火葬場として知られるガート。古くからの火葬の伝統が今も続く
- アシ・ガート:比較的観光客に開放的で、ボート乗車の出発点
- 早朝ボート:午前5時~7時にボートで川を下ると、沐浴者たちの行為、朝日の反射、そして川の神聖な雰囲気を全身で感じることができる。この時間帯が、ガンジス川の最も美しい時間です
おすすめの時間帯と回り方
限られた時間でバラナシを楽しむなら、以下のスケジュールをおすすめします。
- 初日・午前:ガート巡りのボートツアー(1時間~2時間)。複数のガートを見学し、全体像を把握
- 初日・午後:特定のガート(マニカルニカ・ガートなど)での詳しい観察。ガイドから歴史や文化背景を学ぶ
- 初日・夜:ガンガー・アールティの観賞。最もガンジス川の精神性を感じられる時間
- 2日目・早朝:早朝ボート(午前5時出発)。沐浴者たちの行為を観察し、川の聖性を体感
現地での具体的な危険と対策を旅行目線で一度整理しておきたい場合は、旅行前に知るべき危険と対策の要点も確認しておくと安心です。
衛生面の注意点(触れる/入る/飲むの線引き)
体調不安・傷口がある場合の判断基準
観光客にとって重要なのは、「ガンジス川と、どの程度の距離を保つか」の判断です。以下のガイドラインを参考にしてください。
- 見る・写真を撮る:安全。制限なし(撮影禁止区域を除く)
- 川の近くに立つ・水が飛び散る程度:安全。ただし、その後は手を洗うこと
- 川の水に触れる・掌に水が付く:やや慎重に。その後、すぐに手を洗い、他の物に触れる前に洗浄する
- 川に入浴する・沐浴:推奨しない(特に観光客)。理由は、長期的な健康リスク(腸内感染症など)の可能性
- 川の水を飲む:極めて危険。絶対に避けるべき。多くの旅行者が、「聖水を飲めば病気が治る」という誤った信仰を持ってしまい、後に深刻な腸炎などを患っています
「もしも川に入ってしまったら」という観点で、汚染の具体像や感染症の例を知りたい場合は、ガンジス川に入った場合に起こり得るリスクの解説も参考になります。
特に注意すべき場合:以下の場合は、川への接触をさらに慎重にすべきです。
- 体調がすぐれない場合
- 皮膚に傷や湿疹がある場合
- 免疫力が低下している場合(高齢、病気治療中など)
- 妊娠中
このような場合は、ボートから景色を楽しむなど、接触を避ける方法で観光を楽しむことをおすすめします。
マナーと撮影ルール(火葬場・宗教行為への配慮)
バラナシは、神聖な宗教都市です。以下のマナーは絶対守るべきです。
- 火葬場での撮影:火葬は家族にとって最も神聖な儀式です。マニカルニカ・ガートなどの火葬場での撮影・動画は、許可がない限り、厳しく禁止されています
- 沐浴者への撮影:沐浴は宗教儀式です。許可なしに撮影することは失礼です。特に高齢者や女性への撮影は避けること
- 寺院・祭壇への出入り:宗教儀式が行われている場所には立ち入らない。「観光エリア」と「儀式エリア」の区別を尊重する
- 裸足での移動:聖地では裸足が尊重されています。ただし、衛生の観点から、サンダルを脱いで歩く場合も、その場所が聖別されていることを意識して行動する
- 一人での行動:特に女性は、夜間に一人でガートを歩くことは避けるべき。危険性と文化的配慮の両面から、ガイド同行をおすすめします
ガンジス川の水は買ってもいい?「聖水」の扱い
ガンガージャル(聖水)とは
バラナシやその周辺では、「ガンガージャル(ガンジス川の水)」という名称で、瓶詰めされた川の水が売られています。これは、聖水として信仰者たちに買われていきます。
インドの信仰者にとって、ガンガージャルは、遠く離れた地から、ガンジス川の聖性に触れる手段です。一滴の水でも、ガンジス川に触れたという経験が、精神的な充足感をもたらすのです。
飲用の可否と、旅行者が取るべき安全策
ガンガージャルを飲むことは、西洋の旅行者にとっては極めて危険です。理由は以下の通りです。
- 病原性微生物:大腸菌を含む多くの病原菌が川に繁殖。これらに対する免疫を持たない外国人が飲むと、深刻な腸炎などを患う
- 化学物質:重金属(クロム、鉛など)が蓄積している。長期的に摂取すると、蓄積中毒を引き起こす可能性
観光客が取るべき安全策:
- 川の水を飲まない
- 市販のガンガージャルも、飲む場合は加熱や消毒を行う(ただし、「聖水を加工する」ことに対する宗教的疑問も生じるため、飲まないことが最も安全)
- 大事な人への土産として、飲まずに保存する選択肢もある
持ち帰り時の注意(容器・衛生・ルール)
もしガンガージャルを土産として持ち帰る場合は、以下に注意してください。
- 容器の選択:ガラス瓶など、密閉が確実な容器を使用。プラスチック容器は漏れのリスク
- 航空機への持ち込み:液体制限の確認。預け荷物に入れることをおすすめ
- 保存方法:冷暗所で保存。室温保存の場合、時間とともにバクテリア増殖のリスクが高まる
- 家庭での保管:開封後は、できるだけ早く使用。冷蔵保存が理想的
まとめ:ガンジス川の「汚い」と「聖なる」を両方理解する
汚れの原因は複合的で、改善も進む
ガンジス川が「汚い」と言われるのは、生活排水、工業排水、化学物質の蓄積など、複合的な原因があります。これは、インド社会が急速に現代化する過程で、環境整備が追いついていないという構造的問題なのです。
ただし、ナマミ・ガンゲ計画などにより、改善の動きも徐々に進んでいます。完全な浄化には時間がかかりますが、10年後、20年後には、今より大きく改善されている可能性は十分にあります。
信仰の意味を知ると見え方が変わる
ガンジス川を理解するには、物質的な「汚れ」だけでなく、ヒンドゥー教の信仰体系を知ることが重要です。
沐浴者たちが「汚い」川に浸かるのは、物質的な衛生性ではなく、魂的・精神的な「浄化」を信仰しているからです。この視点を持つことで、ガンジス川への見方が大きく変わり、単なる「汚い川」という評価から、「複雑で奥深い河川」という認識へと昇華するのです。
観光はマナーと衛生対策で安心して楽しめる
バラナシでのガンジス川観光は、適切なマナーと衛生対策があれば、非常に充実した体験になります。
- 早朝のボートで、沐浴者たちの祈りの場面を目撃する
- 複数のガートを巡り、バラナシの多面的な側面を理解する
- 夜のガンガー・アールティで、川の精神性を全身で感じる
- 火葬場の隣で、インドの死生観の深さを考察する
これらの体験を通じて、旅行者は「ガンジス川 汚いという評価を超えた、ガンジス川とは何か」という複雑な問いに、自分なりの答えを見つけることができるはずです。

